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まんだりん 面白話

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2006年 9月

第五十八話

暑さが一番厳しい8月の半ば、日本では「お盆」と言って短くても数日は「お盆休み」をします。お盆と一緒にあるのは「お中元」ですね。シンガポールにも似たような風習があるが、日本とずいぶん違いますので今回、それを簡単にご紹介します。


盂蘭盆節 Yu    lan   peng  jie
中元節 Zhong  yuan     jie


 旧暦7月15日は漢民族の伝統では「盂蘭盆節」或いは「中元節」といって、お正月に次いで大切な祝日にあたります。
 シンガポールでも同じで、仏教徒はそれを「盂蘭盆節」、道教信者とその他の華人は「中元節」と言い、その意味も少し違います。仏教徒は「目連伝説」によって「親孝行」の思想を広げようとし、道教等は「人間贖罪、先祖を祭る」意味を強調します。

 そして1日から31日まで、まる一か月間にわたってシンガポール華人はみんな同じように先祖への供え物をそろえたり、郊外へ墓参りに繰り出したりします。

 この一か月の間、町中でよく見られる光景は二つあります。一つは至るところに「焚き火」が昇ること。華人は祖先の霊を供養する時、好きな食べ物を供え、天国で使う馬蹄銀の形をした錫箔の紙銭を焼く習慣があります。市民がみんな家の前や周りでそれらを勝手に焼くため、火災にでもなりかねない危険があります。

そこで政府は何千個ものドラム缶を道端や住宅団地の空き地に設置し、安全管理をしています。住民が集中した場所で「中元会」をやる時、大きいロウソク等も燃やし、火や煙が町中に立ち込める光景が目に入ります。



歌台 Ge    tai
福物競売 fu    wu    jing  mai


もう一つは賑やかな「中元会」で、市民が自発的に催す大型イベントです。主な内容は「歌台」と「福物競売」。「歌台」はステージを設け、流行歌、方言歌、地方劇など市民文芸を繰り広げます。周りにはテーブルが置かれ、観客が主催者の食事招待を受けるところもあります。

その前後によく行われるのは「福物競売」。主催者や企業が寄付した「福物」(縁起物)の競売会がこの祭日の最高潮を作り出します。シンガポール独特な「福物」には「烏金」(炭の彫刻物)、「米桶」、仏像などがあります。

このせり売りの掛け声は広東語もマンダリンもだめで、福建語でないと「中元会」の雰囲気にならないと言われています。競売会で集めたお金は一部、来年度中元会の費用にする以外は病院や民間慈善福祉施設に寄付します。


 若い華人シンガポーリアンは「中元離れ」と言われています。彼らは主にこの焚き火と煙による環境汚染、「歌台」と競売会の低俗性、騒がしさを問題としていますが、一方、文化伝統の喪失にも危惧を覚えています。



中国語とマンダリン

 中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。

葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生

星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター


長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。