トップページに戻る

まんだりん 面白話

バックナンバー 今月に戻る


2006年 1月

第五十話
戌 年

日本では新年といえば、正月元旦のことですが、中国人、シンガポールの華人はむしろ旧正月の「春節」のことを新年とみて盛大に祝います。
今年は「いぬどし」で、1月29日からです。中国語の慣用句などでは軽蔑や謙遜をする際に、使います。
(ちなみに中国語では「イヌ」のことを「犬」と「狗」と二つの書き方があります。)



犬馬之労
古代中国の家臣が君主に向かって自分のことを犬か馬にたとえて謙遜します。家臣のために自分は犬や馬のように働くという意味です。

走狗
ある人のために走り回るもの、手先。日本語でも犬が使われますね。

狗杖人勢
狗が人の勢いを笠に着て威張るという意味。日常的によく見かける光景ですね。

狗拿耗子
「耗子」は鼠のこと、「拿」は取る。本来、鼠捕りは猫の仕事を、犬がしてしまうというのは、「よけいなおせっかいをする」というたとえです。

狗嘴里吐不出象牙
犬の口の中から象牙は吐き出せない、ということから、「下品な人間はどうしても上品なことは言えない」という意味となります。

 先般、日本では「負け犬」がフィーバーを巻き起こしましたが、私はこの表現と犬に非常に可愛さを感じました。一方、中国語の表現の中では「犬・狗」がついたものにはほとんどののしることばになっていることに、戌年生まれの私は残念でなりません。

アンバオ
 さて、次はシンガポールの旧正月の年始回りとお年玉について簡単に紹介します。
 シンガポールではお歳暮の慣習はないものの、年始回りは盛んです。人の家を訪ねたり、どこかで会合したりした時の挨拶の言葉は「恭喜發財」(gong1 xi3 fa1 cai2)(儲かるように)」で、それと同時に福桔(ミカンではなく、橘子でなければならない)を二つ差し出します。橘子は黄金色をしているので、財産や大吉を意味します。そして、帰り際に相手からも同じような福桔を二つもらいます。
 次のところへ行っても同じようなことを繰り返します。だからシンガポールでの年始回りにはお金がかからないし、お土産に思い悩むこともありません。二つの福桔でよく、どれだけ多くの家を回っても、最後に福桔が二つ残ります。

 お年玉は「アンバオ」と言います。旧正月の前に、旧正月の一日から七日まで年始回りの期間中、赤い袋を使ってお年玉をあげます。あげるのは結婚した人、独身貴族の人。もらうのは次のような人です。
●スクールバスのドライバーさん。金額は10ドル以下。
● 家で働くメイドさん。10ドル以下。
● Tuitionの先生、園芸士、定期的に家の掃除をしてくれるおばさんなどには10ドルが適当でしょう。お年玉の金額は偶数でなければなりません。

 旧正月のお年玉はあくまでも中国人同士の気持ちの現れなので、日本人の皆さんはそんなにこだわる必要はないと思います。ちなみに、マレー系の人にはどうも宗教上の理由で、犬が好まれないようで、お年玉も偶数ではなくて、奇数だそうです。
(先月号で紹介した4大名著の続きは次号となります)



中国語とマンダリン

 中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。

葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生

星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター


長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。


このサイトの無断転載等を禁じます。copyright 2004-2006 Asia Business Network
免責事項について // サイトに対するお問い合わせ:arcins@singnet.com.sg