まんだりん 面白話 |
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2005年 10月
第四十七話
日本とシンガポールの 常識・非常識
今回はシンガポールと日本の両方に 住んだことがある私が感じた、
二国間の常識の違いを話します。
寒暖への思い
欲望でしょうか? 寒いと、暖かいところに住みたくなり、暑くなると雪国の生活に憧れを持ちます。
日本や中国で生活している人々は長かれ短かれ、春夏秋冬といった寒暖の差がある気候が当たり前で大自然の恩恵だと思っているでしょう。ところが、シンガポールに来て現地の人と付き合ってみたら、この四季の変化が好きじゃないという人が中に多くいることを知ってビックリしました。
ローカルの友人に「シンガポールは何が一番いいと思っているか」と聞いたことがあります。答えは広い家でもきれいな自然でもなく、「四季の変化がない」ことでした。はじめは不思議でしたが、10数年もここに住んで「わけ」がだんだん分かってきた気がします。
季節の移り変わりがあると、「衣替え」に気を配らなければなりません。熱帯の人たちはどうもそれを面倒がっているのではないかと思います。例えば多くのシンガポーリアンは毎年1〜2回海外旅行をします。行く前にまず、行き先の気温を旅行会社にチェックしてもらい、20度以下ですと「寒い国」と考え、旅行プラン変更します。
多分、秋冬用の服の用意をしたくないのでしょう。
引越し貧乏
日本には「引越し貧乏」ということばがあります。20〜30年、上海に住んでいた私はあまり引越しの記憶もないし、「貧乏」との関係も考えたことさえありませんでした。
東京留学時、そのことばの意味がよく分かりました。
日本で一回引越しをすると、敷金や礼金など出費がかさみます。2〜3年後賃貸契約が完了した時、新しい部屋に移ろうと思ったら、また家賃の数か月分の保証金などを余分に払わなければなりません。いくらアルバイトをがんばっても、一度引越しをしますと学費の工面が大変になりました。
一方、シンガポールでは「樹移死、人移活」(木は別のところに移ると死ぬが、人間は移らなければ、生きていられない)という慣用句があります。この「移り」は仕事、つまり転職のことですが、近年「引越し」についても同じようになっています。
ある調査によればシンガポール人は平均5年ごとに引っ越しをしているそうです。10年も同じ所に住みつく人はお爺さんお婆さん、あるいは出世できない人です。
経済成長、住宅政策などはその背景となっていますが、大きな要因の一つはやはり礼金敷金のないお国柄ではないでしょうか。
中国語とマンダリン
中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。
葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生
星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター
長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。
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