まんだりん 面白話 |
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2005年 8月
第四十五話
ことばの違い
私個人の感想ですが、日本語の中で頻繁に使われる上位3語は「がんばる」「すみません」「どうも」ではないかと思います。
がんばる
「がんばる」ということばですが、今では私もよく使いますが、日本語を習い始めた頃や通訳の仕事についた当初は、このことばの使う頻度の多さに驚かされ、中国語訳にいつも困ったものでした。
日本人は中国語教室でもそうですが、会社や家庭でも頻繁にこの「がんばる」を使います。「がんばる」を直訳すると、中国語は「加油」(ji?
you)、「努力」(n? li)になります。しかし、この二つの中国語は基本的にはスポーツなどの応援や政治スローガンといった特定の場面にしか使いません。
日常生活に使うと非常に激情的な意味を含んでしまいます。例えば、日本の会社でまだ残業している後輩に先輩が「お先に。XX君、がんばってね」という場面はよく見かけます。
もし中国の会社で、残業している後輩は「イ尓要努力」「イ尓要加油」などと言われたら、「なんだ、十分がんばっているのじゃないか」「帰るなというつもりなのか」と、たいがい、頭にくるか、機嫌が悪くなります。
中国ではこういう場面、叱咤激励よりも、「別太累了(ほどほどにね)」(bie
tai lei le)など、ねぎらいのことばを使うのが普通です。
また朝、子供を学校へ見送る時、日本のお母さんは「今日も学校でがんばってね」と励まします。
中国のお母さんは「イ尓要好好学習」(もっとしっかり勉強してね)「聴老師的話」(先生のいうことをよく聞いてね)と言って子どもを送り出します。
もちろん、試合の現場で使う「がんばる」とお母さんのそれとは、意味合いや強さが違うのですが、同じことばを使っていることには違いがありませんね。つまり日本語には一つのことばでいろんな場面で使えるという特徴があるのです。
どうも、すいません
「どうも」はその代表格ですね。私は大学一年生の時、先生から「それが万用語だ」と教わりました。例えば「先日はどうも」というあいさつを、中国語に訳す時、前後の文脈をちゃんと把握しておかないと、おかしいことになります。
私が習った「すみません」は「謝り」を意味することばでしたが、実際、感謝などの意味にも使います。一方、中国語はちゃんと「對不起」「謝謝」「労駕」と別々に表現します。しかし、最近は「すみません」のような「中性的」なことば、「不好意思」が流行り出しています。やはり便利だからでしょうか。
中国語とマンダリン
中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。
葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生
星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター
長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。
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