まんだりん 面白話 |
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2005年 4月
「鶏」に関する表現(2) 第四十一話
先月号に続き、今回も鶏年にちなんで、中国語の中の鶏に関する成語や諺についてお話します。
1、鶏鳴狗盗
これは中国の歴史書『史記』に記載している物語からできた成語です。斉国の王が秦国に拘束された後、その家臣たちが鶏の鳴き声をして、秦に潜入しました。また犬に扮して貴重な毛皮のコートを盗み秦王の妾に賄賂をするなどして、最後に王様の救出に成功したという話です。この「鶏鳴」と「狗盗」は、とても人前には出せない、下劣な小技に過ぎないという意味です。
これは余談ですが、ある調査によれば、いま中国の若者の中ではこの成語を正確に理解出来る人が少なく、「鶏鳴」はいいことで、「狗盗」は悪いことだと思いこんでいる人が大勢いるとか。
2、偸鶏不着蝕把米
ニワトリを盗むことに失敗したうえに、餌とした一握りの米も損してしまうという意味。こっそり得をしようと思って、かえって損をするたとえです。
ある中日辞書で「虻蜂取らず」と訳していますが、ちょっと違うような感じがします。「虻蜂取らず」に対応する中国語諺もまた鶏を使った表現「鶏飛蛋打
(ji fei dan da)」です。ニワトリには逃げられ、卵はつぶれる。あれもこれもと両方を欲張るが、結局なにも得られないという戒めです。
3、割鶏焉用牛刀
中国古典『論語』にある名言の一つ。「鶏を割くのに、なぜ牛を解体するような包丁を使う必要があろうか」という意味です。現在、「小さいことをするのに大きな道具や知恵を必要としない」ということで、当事者が威張って見せたい時に使います。
効率を追求する現代社会では通用する論理の一つかもしれませんが、時たま、「牛刀」がないと割けない「鶏」もいることを忘れてはいけないものです。
いろいろと「鶏」に関する表現法を探してみたところ、鶏はほとんど「ちっぽけな」「か弱い」「無価値」の存在としてしか考えられていません。一方で人間にとっては一番飼いやすく、犬や牛などと同じく身近な家畜となっていることがわかりました。言葉の表現にもそれが表われていますね。
最後にまたクイズを一つ。
Q人間は寒さや恐怖などのために皮膚の毛穴が縮まって「鳥肌」が立ちます。中国語はどんな表現を使うでしょうか?
答え:「鶏皮 (ji pi ge da)」(鳥肌ぶつぶつのようなもの)日本語と似ていますね。
中国語とマンダリン
中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。
葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生
星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター
長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。
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