まんだりん 面白話 |
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2004年 12月
中国語の諺・成句 第三十七話
先月に続き、今回も日本語と比較しながら中国語の諺・成句のことについてお話します。(《 》の中は中国語、「 」の中は日本語)
bei shui che xin
1、≪杯水車薪≫【ベイ シュイ チェ シン】「焼き石に水」
これは中国昔の故事から来た成語です。「杯水」は茶碗水一杯という意味、「車薪」は馬車一台の焚き木。わずかの水で燃え広がる薪を消火しようと思っても力が及ばないという喩えです。日本語の方は、同じく水を使いますが、薪の代わりに石になっていますね。
Ban men nong fu
2、≪班門弄斧≫【バン ミェン モン フー】「釈迦に説法」
唐の時代に「魯班」という有名な大工さんがいました。その名匠の家の前で斧をいじったり振り回したりするような人は身のほどを知らずとしか言いようがありません。しかしこの諺は現在、自分より能力のある人に向かって使う謙譲語の一つになりました。つまり、なにか技や技能を披露しようとした時、まず相手のことを「魯班」と尊敬して、自分がまだ素人ですが、敢えてやってみるとへりくだります。同じように、自分より上手な人の前で恥をさらしたくない時も、「《班門弄斧》ができないから」と言って断わります。
Dui niu tan qin
3、≪対牛弾琴≫【ドゥイ ニウ タン ヂン】「猫に小判・馬の耳に念仏」
これは中国語と日本語の発想が似ていますね。牛に対して琴を弾いても相手が牛だから分からない、無駄なことだという意味です。日常生活の中でこの諺が使われた時、多かれ少なかれ相手をばかにするニュアンスが入っています。日本語では猫と馬が使われる点が興味深いです。
You qian neng shi gui tui mo
4、≪有銭能使鬼推磨≫【ヨウ ヂァン ネン シ
グイ トゥイ モー】「地獄の沙汰も金次第」
最後の「磨」は動詞として使う時、「こする」、「磨く」の意味ですが、名詞として使う時は「ひきうす」です。銭があれば鬼にもひきうすを押してもらうことができるという意味です。つまり、金には「鬼を働かせる力」があるという人間の物凄さというか、性(さが)をうまく表現しています。面白いのは日本語の中でも鬼と関係がある「地獄」が使われるところです。ちなみに英語では「雌馬を働かせる」のです。
最後にまたクイズ。
「勇気」や「度胸」があることを表現する場合、日本語では「肝」か「心臓」を使います。(例えば「肝が太い、心臓が強い」)中国語は何が使われるのでしょうか。ヒント:同じ人間の内臓の一つです。
Dan【ダン】 dan zi da【ダン ジ ダー】
答え:≪胆≫です。≪胆子大≫と言います。昔の人々は肝と胆の違いを知らなかったのでしょうか。
中国語とマンダリン
中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。
葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生
星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター
長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。
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