まんだりん 面白話 |
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2002年12月
日本語からの外来語 第十三話
前回の「外来語」に続いて今回は、中国語の中にある日本語からの借用語について。
長い日中交流の中で日本語の中には中国語がたくさん借用されています。
しかし19世紀に入ってからその流れが逆転されたことをご存知でしょうか。
明治維新の時、日本は近代化を成し遂げるために、欧米の新しい事物の名称や概念を日本語に訳さなければなりませんでした。
その際、古代中国語から借りた漢字を日本人の発想で組み合わせて新しい漢字語をたくさん作りました。
例えば「哲学」、「物理」、「経済」、「文学」、「保険」など。
しばらくして中国も西洋列強に学ぼうとした時、多くの知識人が日本に留学し日本語で書物を利用しました。
その結果、日本生まれの言葉が中国に「逆輸出」されました。現在、日本人が作った「資本」、「政党」、「社会主義」、「選挙」などのことばを中国人は何の違和感もなく中国語と併用しています。
このように古い漢語の再構成によって作られた「和製漢語」は中国語の外来語の中で一番大きな割合を占めています。
それ以外に、もう一種類の純粋な日本語からの外来語があります。
「取消(qu3 xiao1)」「手続(shou3 xu4)」「場合(chang3
he2)」「取締(qu3 di4)」「立場(li4 chang3)」などは、もともと日本語の訓読みの和語「取り消し」「手続き」「場合」「取り締まり」「立ち場」から変身したものです。
中国人はそれら中国語の造語法に従って出来ている漢字の部分とその意味だけを取って発音を中国語の共通語のものにしたのです。
漢字に仮名が混じっているせいか、あるいは訓読みの和語漢字が中国語と性が合わないせいか、この種の語の借用率は前に述べた和製漢語よりずっと低いです。
一方、「経済」や「文化」のような言葉は中国の古典にもあり、一概に「和製漢語」とは言えないと主張する人もいます。
これらの語は意味や使い方も昔とは大きくずれているため、一旦輸出したものが輸出先で加工されて、また逆輸入されたようなものと思えばいいでしょう。
また、日本と中国両方で使っている漢字の中では、日本で先に作られたものか、それとも中国で先に作られたものか、明らかでないものが多く見られます。
ある中国語に精通した日本の学者が日中両語の「熱」と「暑」の違いに注目して『熱帯』ということばは日本からの外来語という定論を覆しました。理由は、もし日本人が作ったものだったら、『熱帯』ではなくて、『暑帯』であったはずだというのです。
なかなか面白い研究と発見ではないでしょうか。
注・ローマ字綴りのあとの数字は中国語の四通りの声調を表すものです。
中国語とマンダリン
中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。
葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生
星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター
長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。
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