まんだりん 面白話 |
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2002年11月
外来語 第十二話
どの言語も他の言語を借用します。
数千年もの歴史を持つ中国語も例外ではありません。
今回のお話は中国語の借用語、つまり外来語についてです。
中国語の借用語は大きく分ければ次の5種類があります。
1 音訳型
原語に近い音を表す漢字をあてます。例えば「珈琲」 (ka1・fei1、コーヒー)「坦克」(tan3・ke4、タンク)「馬来西亜」(ma3・
lai2・ xi1・ya4、マレーシア)など。
表意文字である漢字の体質に合わないためか、ごく一部の専門語や人名地名に限られています。しかし、外来文化の影響を強く受けるシンガポールと香港では中国本土で見られない「巴仙」(ba1・xian1、パーセント)のように音訳型の借用語が積極的に使われています。
ちなみに日本の飲み屋の「ママさん」の音訳語は「桑」(ma1・ma
sang1)です。
2 音義合体型
漢字の音と意味を兼ねて作ったもの。名訳としてよく知られているのは「可口可楽」(ke3・kou3・ke3・le4、コカコーラ)です。口にあって楽しめるという意味でこの飲み物のことをたいへん上手に表現しています。「幽黙」(you1・mo4、ユーモア)「引」(yin3・qing2、エンジン)なども音訳に使った漢字が同時に意味も表しています。
このような訳し方は難しいせいか、あまり多くありませんが、最近、本土周辺の華人圏で流行っています。
例えば、日本のパチンコを訳した「 金庫」(ba1・jin1・ku4)という言葉はそこに入る人の心理を生き生きと映し出しているのではないでしょうか。子供に大人気のアニメ「ドラえもん」の訳語は、中国では後に紹介する意訳型の「機器猫」(ji1・qi4・mao1)ですが、海外の華人メディアでは音義合体型の「多A夢」(duo1・la1・A・meng4)となります。
3 音訳+類名付加型
ビールは中国語では「 酒」(pi2・jiu3)と言います。Bierを「 」と音訳し、さらに「酒」という類名を加えます。「バレエ」を「芭蕾舞」(ba1・lei3・wu3)と、酒場の「バー」を「酒 」(jiu3・ba1)、インターネットバーを「網」(wang3・ba1)というふうに、必要によって音訳語の前か後につきます。
世界的な恐怖をもたらしたエイズはシンガポールでは「愛之病」ですが、中国の国語審議会の専門家は誤解を招きかねないと「艾滋病」 (ai4・zi1・bing4)という音訳+類名付加型に決めました。
4 意訳型
外国事物の意味を中国語の漢字に移し変える方法で、一番多く用いられる訳し方です。
テレビは「電視機」(dian4・shi4・ji1)ラジオは「収音機」(shou1・yin1・ji1)ロボットを「機器人」(ji1・
qi4・ren2)、ファックスは「傳真」(chuan2・zhen1)。さらに名訳の一つ「電脳」(dian4・nao3)は、日本でも「コンピューター」という語に取って代わる勢いで流行っています。
5種類目の「日本語からの借用語」は来月号で紹介します。どうぞお楽しみに。
注・ローマ字綴りのあとの数字は中国語の四通りの声調を表すものです。
中国語とマンダリン
中国は国土が960万平方キロ、日本の約26倍の広さで、ヨーロッパがすっぽり入る面積です。したがって、地方ごとに「方言」があり、その発音はまったく違います。ヨーロッパでドイツ語とイタリア語が違うように、たとえば北京の人と上海の人とでは、通訳がないと会話が成り立ちません。
そこで、コミュニケーション用の共通語が必要になります。こうして定められた言葉が「マンダリン」です。大陸では「普通語」といい、「普」遍的に「通」用するという意味です。
したがって、「マンダリン」あるいは「普通語」は、中国人および華人の共通言語で、外国人からは「標準中国語」と呼ばれています。
葛珠慧(ガー・チュイフィー)先生
星日外国語学院院長、シンガポール大学(NUS)・南洋理工大学(NTU)日本語非常勤講師。元CCTV(中国国家テレビ局)国際部キャスター
長年シンガポール大学の日本語講師を務められている葛先生は、上海のご出身(現在はシンガポール国籍を取得されています)。ご主人ともども日本留学経験のある親日家です。
超大国アメリカが同時多発テロに見舞われ、ほとんどの国が経済不況に陥っているなか、中国だけが8年連続でGNPを8%以上増加させ、APECの上海開催、WTO加盟、2008年の北京オリンピックなど元気ぶりが目立ちます。
駐在されている方々も、中国への出張や転勤が増えています。また、長年滞在していても、マンダリンができないために不自由を感じておられる方が大勢おられます。この連載を通じて、ぜひマンダリンに親しんでください。
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