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にっぽん細見

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2007年 2月

第62回


義理「年賀状」


昔、見た映画で、商社を退職した途端、年賀状の枚数が100分の1になったことを歎くシーンがあった。
以前は「そんなものか」と思っていたが、いまは「そんなものだろう」と妙に納得している。

 お正月を留守にしたため、新年10日を過ぎて年賀状を読んだ。細かく仕分けされて郵便受けに入れられていた。どうやら、元旦から少しずつ配達されたようだ。
 今年も、全国的に元旦の年賀状配達が少なかったという。前年より67%少ない191900万枚で、7年連続で減少している。

 年々、年賀状を投函するのが遅くなっている。郵政公社が一日に処理できる枚数には限りがある。「遅出し」の年賀状が増えると、「積み残し」が多くなり、元旦はおろか2日にも配達できないという。

 郵政公社も手をこまねいている訳にはいかない。各地の郵便局は年末になると、干支の置物をプレゼントしたり、浴槽を設置して足湯サービスをするなど、パフォーマンスで「早出し」を呼びかけているが、効果はあまりないようだ。

 「はがきにするか電子メールにするか」で、年賀状をめぐって毎年、いろんな調査が実施されている。ネット会社の調べによると、はがき派が47%、メール派が9%で、まだまだメールは少数派だ。ただし、はがき・ネット両派が28%に上る。

 注目されたのが、団塊の世代。昨年退職した人や、今年退職予定の人たちの動向だ。
プリンター会社が、年賀状に対する意識の変化をたずねたところ、全体では
15%に過ぎなかった「変化がある」と答えた人が、退職(予定)者では44%に上った。
 変化の内容は、仕事よりもプライベート関係を重視したことだ。いろんな人に年賀状を送るよりも、狭く深く、気の知れた人に送るという。仕事で付き合っている人の大部分は、退職すると関係が薄れる。これからの人生で大切なのは、プライベートで親しく付き合う仲間だ。軸足を仕事から個人へと移そうとしている。

 年賀状の枚数も、退職者の45%が「減る」と答えている。義理チョコならぬ義理年賀状に見切りをつけて、新しい人間関係を築こうとしている姿が、年賀状にも反映している。これは「余裕」なのか、それとも「あせり」なのだろうか。


(テレビ局エグゼクティブ・プロデューサー)



小 橋 繁 好  Shigeyoshi KOBASHI
(テレビ局エグゼグティブプロデューサー)

1946年、岡山市生まれ。
70年、新聞社に入社し社会部記者として事件、司法などを担当。
現在、テレビ局で報道と番組制作を担当している。