自閉症坊やとかあさんの新嘉坡雑記 |
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2006年 12月
第7回
もっとすごい魔法を練習してるんだよ
12月、次男は6歳の誕生日を迎えます。
「ひらがな」という魔法(文字言語)を獲得した彼は、色々な面で大きな成長を見せてくれました。
そして最近、さらなる魔法(発音)を練習中です。
次男が「ひらがな表」を使って意志を伝えるという魔法を手に入れてから数か月。なんと彼は「ひらがな」の音も認識できるようになりました。
わずかな発声しかできなかった次男。彼の発音促進に一役買ったのが「人間ビデオデッキ」のような長男です。長男は聞いて理解する力が乏しく、見て理解する力が優れているという自閉症児の特徴を強く持っています。そのため、映像のあるテレビが大好き。長男の口からは気に入ったビデオの音声が独り言として流れ続けます。
長男は、アンパンマンの『はじめてのあ・い・う・え・お』にすっかりハマってしまい、一時期「アンパンマンのあー、いちごちゃんのいー」といった独り言を一日中繰り返していました。ところが母の困惑をよそに、それを聞いていた次男は、「ひらがな」の字形と音をつなげて考えられるようになったのです。
ある日、私がなにげなく次男に向かって「アンパンマンの?」と聞くと、彼は「あー」と蚊の鳴くような小さな声で答えてくれました。
「えっ! うそでしょう!?」
母はまるで100mを全速力で走った直後みたいに心臓がドッキンドッキン! 涙で顔をくちゃくちゃにしながら次男に抱きついていました。
このときばかりは頭を抱えている長男の独り言に心から感謝。これを機に次男は発音することを嫌がらなくなりました。「ト・イ・レ」と発音してトイレに行きたいことを伝え、「オ・ハ・ヨ」と朝の挨拶もするように。一生喋れないかもしれないと覚悟していた次男がたとえわずかでも意味のある音を出せるようになったことは、本当に大きな喜びです。そして、そのきっかけを長男が作ってくれたことを母は何よりうれしく思います。
母はいつの日か、次男がすごい魔法使いになってくれることを期待しています。次男が長男に「兄ちゃん、独り言うるさいよ」と言ってくれるような日が来ることを信じて。
YUKKO 7歳と5歳になる男の子の母。二人とも自閉症という障害を持っている。 不安いっぱいでスタートした在星生活も、人との出会いに恵まれ、早3年目を迎えた。 |