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自閉症坊やとかあさんの新嘉坡雑記

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2006年 11月

第6回


僕、ひとりで踊ったよ



長男にとって初めての小学校の運動会。
練習は、二学期が始まって早々にスタートしました。
予想通り「運動会おしまい!」を連発する長男。
どうなることやらと思いながら、当日を迎え・・・

 1年生の種目は、かけっこ、ダンス、玉入れ。それはもう幼稚園とは比べものにならない難しさでした。
 長男にとって一番難しいのがダンスです。ひとつのことを覚えるのにとにかく時間がかかる長男。宿題を終えて、夕食までの30分間が毎日ダンスタイムとなりました。

 最初はダンスの曲が聴こえた途端、長男は「ダンスおしまい!」と叫んでCDのスイッチをオフ。母は負けじとオン。長男はまたオフ。そんなことを繰り返し、遂に母はCDのスイッチを片手で押さえたままダンスを踊っていました。

 まず曲に慣れさせ、目からの情報を繰り返し与え続けること、そして何より「諦めないこと」。何日かすると、長男は曲を聴くのを嫌がらなくなり、さらに日が経つと、母が手を持ったら踊るようになりました。でも、それはまるっきり操り人形。どんどん日は過ぎていき、焦る母・・・。

 運動会の数日前から白帽(長男は白組なので)をかぶらせ、体操服を見せて「もうすぐ運動会だよ」と長男に繰り返し伝えました。
 そして、迎えた運動会当日。いよいよ1年生たちのダンスの出番です。先生が付き添ってくださるというので、母は生徒席で待機。スピーカーから曲が流れ出し、母は祈るような思いで見つめます。すると、その視線の先で、長男がひとりで踊り始めたのです。もちろん、お友達のように上手に踊ってはいませんが、それなりに曲に乗って踊っています。

「すごい、すごいよ! ちゃんと踊っているよ」
 うれしくて、うれしくて、もう涙、涙です。
「本当に一年生になったんだね、大きくなったね」
 母はこのとき初めて長男が一年生になった喜びを実感しました。
 小学校最初の運動会。母は長男からまた「諦めないこと」の大切さを学びました。
 長男は運動会が終わっても、ときどきダンスの曲を口ずさんでいます。


YUKKO
7歳と5歳になる男の子の母。二人とも自閉症という障害を持っている。
不安いっぱいでスタートした在星生活も、人との出会いに恵まれ、早3年目を迎えた。