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自閉症坊やとかあさんの新嘉坡雑記

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2006年 5月

第2回


「はい、元気です」が僕の目標です



4月から新しい幼稚園に通い始めた次男。
毎日ニコニコ顔で通園しています。
そんな絶好調の彼が電車やバスで見せるコミュニケーションの方法に、母は困惑中です。



 息子たちは外で遊ぶのが大好き。多動タイプの自閉症児である彼らを休日どこに連れて行こうか頭が痛いところです。公園に行っても暑くて長くは遊べません。どうにも行くところがなくなると、クーラーの利いたバスや電車の出番になります。

 二階建てバスや、景色の見える区間を走るMRTは彼らのお気に入りです。ただ、楽しい時間といえども、気は抜けません。長男は歌ったり、独り言を言ったり、ときには癇癪行動を起こします。次男は盛んに手をパンパン叩く常同行動。私はそんな二人に「静かにして!」と注意しますが、周囲から冷ややかな目で見られることもあります。

 そんななか最近、次男は新たな行動を始めました。なんと乗客たちにニコニコと握手をしてまわるのです! もちろん困った顔をされる方もいて、私は頭を下げてまわります。しかし、必死の私がふと気付くと、雰囲気が和み、乗客の目が優しくなっていることがあります。苦笑いするおじさん、手を出して歓迎してくれるカップル、ハローと笑顔で握手を交わしてくれる若者…。

 5歳になっても全く発語がない次男は、握手でコミュニケーションを取ろうとしているようです。まるで「僕のことを分かってください」と求めるように。

 シンガポールでは、多民族・多言語の社会だけに、息子たちの行動に寛容です。しかし、次男の握手は日本では恐らく受け入れてもらえない、それを考えると私は複雑な気持ちになります。習慣になってしまう前にやめさせるべきなのかもしれません。

 日本を離れて思うこと。閉鎖的なところがある日本は、許容力のあるシンガポールから学ぶところがあるのではないかと思います。次男が嬉しそうに差し出す小さな手を見守りつつ、私の心は揺れ動いています。


YUKKO
7歳と5歳になる男の子の母。二人とも自閉症という障害を持っている。
不安いっぱいでスタートした在星生活も、人との出会いに恵まれ、早3年目を迎えた。